序章.これから日本人に起こる10の変化
人生100年が当たり前になる
●長く生きられるようになった年月の大半を、私たちは健康に生きることになる。若々しく生きる期間が長くなる。
新しい職種とスキルが登場する
●ほぼすべての職が、ロボットと人工知能によって代替されるか、補完されるだろう。
3ステージの人生が終わる
●これまでは、学生として学ぶ「教育」のステージ、社会に出て働く「仕事」のステージ、そして定年退職して老後を過ごす「引退」のステージがあった。
人生はマルチステージ化する
●3ステージの人生に代わってこれから登場するのが、マルチステージの人生だ。生涯に二つ、もしくは三つのキャリアを持つようになる。
●過去や前例に凝り固まり、それに縛られるのではなく、新しい思考様式を模索しよう。新しい視点で世界を見よう。そして、変化を恐れないこと。
エイジとステージのリンクがなくなる
●変化が当たり前になれば、一斉行進の時代は終わる。
まだ見ぬ新しいステージが誕生する
■新しいステージ
①選択肢を狭めず幅広い針路を検討する「エクスプローラー(探検者)」
②自由と柔軟性を重んじて小さなビジネスを起こす「インディペンデント・プロデューサー(独立生産者)」
③さまざまな仕事や活動に同時並行で関わる「ポートフォリオ・ワーカー」
選択肢を持っておくことの価値が増す
●人生が長くなり、人々が人生で多くの変化を経験するようになる。変化に対応するためには、さまざまな選択肢を持っておかなくてはならない。要するに、選択肢を持っていることの価値が増すのだ。
無形資産がより重要になる
●私たちは、やさしい家族、素晴らしい友人、高度なスキルと知識、肉体的・精神的な健康に恵まれた人生を「よい人生」と考える。これらはすべて無形の資産だ。
●無形の資産は、それ自体として価値があることに加え、有形の金銭的資産の形成を助けるという点で、100年ライフの重要なカギを握っている。有形と無形の両方の資産を充実させ、両者のバランスを取り、相乗効果を生み出していく。
家庭と仕事の関係が変わる
●昔ながらの家族形態は、長寿化時代には適さない。むしろパートナーの両方が職を持っていたほうが、明らかにメリットがある。
自分の再創造に時間を使うようになる
●人生で多くの移行を経験し、多くのステージを生きる時代には、生涯を通して投資をしていかなくてはならない。
①新しい役割に合わせ、自分のアイデンティティを変えるための投資
②新しいライフスタイルを築くための投資
③新しいスキルを身につけるための投資。
●寿命が延びて人生の時間が多くなれば、投資に費やせる時間も増える。人生が長くなれば、何か別の新しいチャレンジができる。本人にとっては知的好奇心を満たしてくれる至福のひとときである。
●自分を再創造するーそれがリ・クリエーションだ。消費とレクリエーション(娯楽)を減らし、投資とリ・クリエーションの比重を増やす。
1.人生100年時代は本当に来る?
■日本人の50%が到達しうる年齢
・1977年生まれ=98~101歳
●長寿化が進めば人生の時間は大幅に増える。長寿化に備えるために、私たちは人生全体を設計し直さなくてはならない。まずは「よい人生」とは何かについて、これまでの考え方や価値観を変えることが不可欠だ。長寿化時代には、人生の新たなステージがいくつも出現し、パートナー同士の関係も様変わりする。
●人生が短かった時代は、「教育→仕事→引退」という三つのステージの生き方で問題はなかった。しかし寿命が延びれば、二番目の「仕事」のステージが長くなる。引退年齢が70~80歳になり、長い期間働くようになる。
●長い年数を働き続けるのは、あまりに過酷だ。そして率直に言って、あまりに退屈だ。果たしてそれは「よい人生」と言えるだろうか。私たちは3ステージの人生の縛りから自由になり、もっと柔軟に、もっと自分らしい生き方を選ぶ道がある。それが、マルチステージの人生だ。
2.3ステージの人生は苦しくなる
●引退した人々を調べた研究によると、不活発な生活を長期間続けている人は、認知能力が減退したり、人生に対する満足度が低下したりすることがわかっている。人には適度な刺激が必要なのだ。
3.無形資産が人生を左右する
■資産=ある程度の期間にわたり恩恵を生み出せるもののこと
■無形資産
①生産性資産〔あなたのキャリア形成に役立つ資産〕
人が仕事で生産性を高めて成功し、所得を増やすのに役立つ要素のこと。スキルと知識が主たる構成要素だが、ほかにもさまざまな要素が含まれる。
②活力資産〔幸福感と充実感を得るための資産〕
大まかにいうと、肉体的・精神的な健康と幸福のこと。健康、友人関係、パートナーやその他の家族との良好な関係などがこれに当たる。
③変身資産〔ステージの移行を成功させる意思と能力〕
100年ライフを生きる人たちは、その過程で大きな変化を経験し、多くの変身を遂げることになる。そのために必要な資産のことで、自分についてよく知っていること、多様性に富んだ人的ネットワークを持っていること、新しい経験に対して開かれた姿勢を持っていることなどが含まれる。
4.人生はマルチステージ化する
ステージ①「エクスプローラー」
●「エクスプローラー」とは、未知の世界と自分を発見する探索者である。探検する、探索するステージのことだ。
●このステージは発見の日々だ。旅をして世界、また自分について新しい発見をする。
●エクスプローラーとして生きるのに適した時期が三つある。①18~30歳くらいの時期 ②40代半ばの時期 ③70~80代くらいの時期
ステージ②「インディペンデント・プロデューサー」
●「インディペンデント・プロデューサー」とは、職を探す人ではなく、自分の職を生み出す人である。
●本書では「起業家」ではなく、あえて「独立生産者」という言葉を使う。永続的な企業をつくるのではなく、もっと一時的なビジネスのことを指す。
●成功することよりも、ビジネスの活動自体を目的にしている。組織に雇われずに独立した立場で生産的な活動に携わるためにまとまった時間を費やすことが、大きな意味を持つ。
●55歳以上の年齢層では、起業する人の割合がすでに急増している。将来は、70代や80代の人が起業する割合も増えてくるかもしれない。
●組織に属さずに主体的に働くことは、ライフスタイルを維持し、同時に生産性資産と活力資産を支えるための有効な方法だ。
●インディペンデント・プロデューサーの主たる関心事は、ものごとを生み出すことだ、それを通じて、障害を克服できる行動志向の人物という評判を確立することだ。高い能力を築き、上手にそれを見せ、宣伝することは、インディペンデント・プロデューサーにとって不可欠だ。
ステージ③「ポートフォリオ・ワーカー」
●「ポートフォリオ・ワーカー」とは、異なる活動を同時におこなう人である。さまざまな活動のバランスを主体的に取りながら生きる。
■さまざまな活動
①所得の獲得を主たる目的とする活動
②地域コミュニティとの関わりを主たる目的とする活動
③友人や親類の力になるための活動
④趣味を極めるための活動
5.100年人生の新しいシナリオ
●人生が非常に長くなるため、活力資産を保つことがきわめて難しくなる。
●長寿化時代には、無形の資産を補充し、本格的な移行を成功させるために自分を「再創造」する期間を設けることが当たり前になる。余暇の時間の多くを消費ではなく投資に割かなくてはならなくなる。
●人生で多くのステージと多くのキャリアを経験するようになれば、そのすべてを貫く一本の柱を一層しっかり待つ必要が出てくる。これがアイデンティティだ。そのような柱があってこそ、人生のシナリオが真の意味で自分のものになる。自分がどういう人間なのか、何を大切にするのかが明確になれば、人生の多くのステージに一貫性を持たせられる。
6.お金の心配を減らすための考え方
■100年ライフを送るために必要なお金の考え方
①お金の現実を直視すること
②お金に関する自己効力感(自分ならできるという認識)
③お金に関する自己主体感(みずから取り組むという認識)
7.生涯現役でいるために必要なこと
●100年ライフでは、私たちは多くのことを成し遂げられる。長い人生は、基本的に一つの長い旅と考えるべきである。
●自分が生まれた社会の伝統にしたがうのではなく、自らの価値観や希望に沿った生き方をする。100年ライフの計画を立てるためには、自分が何をしたいのか、どのようにそれを達成したいのかという重要な決断をしなくてはならない。
●長い人生を通して生産的でありたいと思う人は、何か一つでもいいから困難な学習目標を立てて、強い覚悟を持ち、目標に向けて脱線せずに忍耐強く努力し続けよう。
8.学校と企業はどう変わるのか
■これからの企業に問われる六つの課題
①無形の資産に目を向ける ②移行を支援する ③マルチステージの人生を前提にする ④仕事と家庭の関係の変化を理解する ⑤年齢を基準にするのをやめる ⑥実験を容認・評価する
終章.あなたが未来の「ロールモデル」に
●3ステージの人生のままの価値観では、100年ライフを生き抜くことができない以上、これは私たち一人ひとりが乗り越えなくてはならない試練だ。
●長寿化は既存の生き方に縛られず、自由に生きるチャンスにもなりうる。
●過去のロールモデルは、もはや役に立たない。著者たちの願いはただ一つ。どうか、あなた自身が、100年ライフを生きる未来の「ロールモデル」になってほしい、ということだ。